ガスレビューコラム

粗鋼生産量減少で懸念される市中へのアルゴン供給力低下

安定供給のため横持輸送増加、海外輸入も検討

国内の高炉一貫製鉄所での粗鋼生産量が減少、市中へのアルゴン供給力の低下が懸念されている。
高炉の統廃合も進んでおり、アルゴンの希少性は今後も一層高まりそうだ。

製鋼プロセスで使用する酸素から分離製造されているアルゴン

アルゴンは酸素、窒素と並ぶエアセパレートガスの一つで、大気を原料に深冷空気分離装置で酸素、窒素とともに製造される。
深冷空気分離装置は、沸点の差を利用して気体の成分を分離抽出するプロセス。
アルゴンは沸点が近い酸素側から分離される。
従って、酸素発生量が大きいプラント程、アルゴン生産量を大きくでき、生産効率は高くなる。
国内で最も酸素を消費する高炉は、最も大量の酸素を生産できる深冷空気分離装置が設置されている。
高炉向け深冷空気分離装置は製鋼プロセス向けに酸素、窒素ガスを供給する装置であるとともに国内最大のアルゴンの生産インフラでもあるわけだ。

粗鋼生産量が減少すれば高炉の稼働率が下がり、酸素の消費量が落ち込む。
酸素が減れば、アルゴンの生産量も減ってしまうわけだ。
近年では高炉の閉鎖や脱炭素化のため高炉から電炉へのシフトも計画されており、アルゴンはますます生産しにくいガスになってしまっている。

大気中に1%しか含まれないアルゴン

もちろん、大気が原料だけに、アルゴンは高炉向け以外に設置されている深冷空気分離装置でも生産可能である。
ただ、大気中に含まれるアルゴンの割合は1%以下であり、効率良く生産するためには、先述のように空気処理量の大きい大型の装置、とりわけ酸素生産量が大きい方が有利になる。
高炉向け深冷空気分離装置は、国内最大の酸素発生量を持つプラントであり、
そこが縮小していけば、効率的なアルゴン生産に支障をきたすわけだ。

製鉄以外の深冷空気分離装置からアルゴンを製造

アルゴンは半導体の基板となるシリコンウェーハの製造、ステンレスをはじめとする金属精錬、溶接などに用いられる。
アルゴン不足に対応して産業ガス業界では、アルゴン収率が低い高炉向け以外のプラントでの増産などの対策を検討している。

アルゴン増産の候補となるのは半導体向けオンサイトプラントである。
半導体ファブの大規模化に伴いオンサイトプラントの空気処理量も増大している。
ただ、こちらは主に窒素ガスを製品化するプラント。
アルゴン取りを行うことで、窒素の製造原価は上昇してしまう。

他の対策には生産余力がある地域から余裕のない地域へ横持ち輸送で賄う、また海外からアルゴンを輸入するといったものがある。

利用現場で回収・再利用の動きも出てくる

アルゴンは酸素、窒素と異なり、原理上、PSAや膜分離装置によるオンサイト製造ができない。
大量需要家には液ローリーによる配送しか手段がない。
横持輸送の増加、海外輸入となれば、いずれも供給コスト増につながり、収益性確保のためには価格改定も必要とされている。
アルゴン価格の上昇は、利用者側での節約志向を高め、回収・再利用を促す動機にもなっている。

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