ガスレビューコラム

ミルクは売っても、牛は売るな!

工業ガス業界のビジネスモデル

「ミルクは売っても、牛は売るな」というのは、古くから工業ガス業界に伝わる事業モデルについての格言である。
ミルク=ガスは売っても、牛=発生装置などの機械は売ってはいけないという教えである。
幾つかの例外はあるにしても、世界中の工業ガス企業は、この格言の通りビジネスを展開してきている。

主要な工業ガス製品である酸素ガス、窒素ガスはエアセパレートガスと呼ばれ、大気から分離・精製して製造される。このエアセパレートガスの製造には、深冷空気分離装置をはじめPSA、膜分離装置といった発生装置が不可欠である。
工業ガス企業は、ユーザーにガス体製品を供給する工業ガスビジネスを展開する際、発生装置で製造したガス体製品を売っても、発生装置そのものをユーザーに売ってはいけない。
なぜなら、ユーザーが発生装置を保有してしまったら、自分でガス体製品を作って消費してしまい売ることができなくなるからだ。

発生装置と液体製品で安定供給を実現

工業ガス企業は発生装置を所有し、時にユーザーサイドの隣接地やユーザー敷地内のスペースを賃借して発生装置を置いて、そこでガス体製品を製造して供給するビジネスを展開している。
もし、発生装置がトラブルで止まってしまったら、液体製品でバックアップするなどの対策を講じている。
発生装置を売らず、ガスを売ることで工業ガス企業は、ガスユーザーに対して、安定供給という価値を提供し続けているともいえる。

発生装置に限らず、客先で液体製品を貯蔵しておくCEタンク、高圧ガスシリンダーといった容器に至るまで、ガス供給に関わる機器・設備については、基本、全て供給者側、すなわち工業ガス企業側が所有、一部ユーザーに賃貸する形となっている。
これもユーザーに安定供給という価値を提供するために必要なカタチと言えるものなのである。

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