ガスレビューコラム



2025.03.17
タマゴが先か、ニワトリが先か
水素エネルギー開発のジレンマ
「タマゴが先か、ニワトリが先か」という比喩は、新しいシステムが普及する際に需要(ニーズ)が先か、それとも供給(インフラ)を整えるのが先か、という問題に直面した時に使われる。
タマゴがないとニワトリは生まれない。でもそのタマゴはニワトリがいないと生まれない。
どっちが先なのかというジレンマである。
水素エネルギーの導入においても、この比喩が度々引き合いに出されてきた。
今から10年ほど前、燃料電池自動車(FCV)の一般発売の時。
FCVの利便性を高めるには、水素を供給する水素ステーション(インフラ)の整備が欠かせない。
でも、水素ステーションを整備していくには、持続的な運営を可能にする充分な台数の車が必要となる。
まさに、車が先か、インフラが先かということが議論された。
結果、政府の補助金を活用して、インフラを先行的に整備していくことになった。
ただ、肝心の車の販売がイマイチだったこともあり、普及は一段落してしまっている。
問題は水素エネルギー開発全体に波及している
タマゴが先か、ニワトリが先か問題は、FCVだけでなく、水素エネルギー開発全体にも及んでいる。
水素供給インフラを整備するには、安定的に水素を使う需要先が必要だ。
需要先は安価で安定的に水素を供給できるインフラがないと使い続けることはできない。
需要を増やすことと供給インフラを整える、どちらが先かというジレンマは付きまとう。
理想は需要と供給が同じタイミングで整備されていくこと。
そこで、この関係をタマゴとニワトリではなく、花とミツバチにたとえる考え方も出てきている。
花とミツバチはお互い共生関係を結んでおり、お互いの存在が自分たちの生存に大きく貢献している。
水素の需要とインフラの関係も、花とミツバチのような関係性が求められている。