ガスレビューコラム



2025.03.24
脱炭素化に貢献する産業ガス
産業ガスの利用動機そのものが、脱炭素の実現に貢献している
地球規模の気候変動を抑えるため、カーボンニュートラル(脱炭素化)の実現に向けて社会全体が大きく動き出している。
産業ガスは、利用動機そのものが、脱炭素化に資するものであり、社会が脱炭素化を志向していくということは、産業ガス事業にとって大きなビジネスチャンスとなり得る。
産業ガスは、主にユーザープロセスの生産効率や歩留まり、品質の向上のために供される。
生産効率を高めるとは、エネルギー消費を抑えながら生産量を高めることであり、エネルギー消費を抑えるとはCO2排出削減に貢献することに他ならない。
産業ガスの利用動機そのものがCO2排出削減、すなわち脱炭素化の実現に寄与するものなのである。
燃料消費(CO2排出)を抑え、CO2を回収しやすくする酸素燃焼技術
典型的な脱炭素貢献ガス利用技術に酸素燃焼がある。
燃焼雰囲気を空気から酸素にするこの技術は、窒素分がないことで、燃焼炉の温度が上がりやすい。
窒素による熱の持ち去りがないことで燃料消費を抑えることができる。
鉄鋼、非鉄精錬、ガラス溶融、ごみ溶融などで燃料削減による省エネ効果を狙って90年代以降導入されてきた技術である。
燃焼雰囲気に窒素がないという事は、排ガス中のCO2濃度が高まることを意味し、排ガスからのCO2回収も容易になる。
これまで燃焼プロセスに酸素を採用するか、否かは、酸素による燃料削減効果と酸素供給コストの見合いで決定されてきた。
削減される燃料費が追加となる酸素供給コストを比べて、燃料費削減効果が大きい業界やプロセスで採用されてきた。
先の鉄鋼、非鉄精錬、ガラス溶融などは、そうした酸素導入効果が見込まれることから採用されてきたのである。
酸素利用の価値は、燃料費削減の価値といえる。
CO2回収には産業ガス技術が活かされる
脱炭素化のためにCO2を回収していくことも産業ガスと親和性が高い。
なぜなら、排ガス中のCO2を回収、精製していくプロセスは、工業ガス製品を製造する際の精製技術に他ならないからだ。
CO2の精製過程では、純度や処理量に応じてPSAやTSAといった吸着分離や液化、分離膜などの精製技術を使い分け、昇圧、液化といった高圧ガスハンドリング技術が駆使されている。
水素・アンモニアのエネルギー利用も
産業ガス業界のビジネスチャンスに
脱炭素化に資するエネルギーとして、水素やアンモニアが、石油や石炭に替わるエネルギーとして使われようとしている。
水素やアンモニアは、カーボンを含まないため、燃やしてもCO2を発生しない。
そこで石炭や石油といった化石燃料に替わるエネルギーとして利用しようというわけである。
水素、アンモニアは常温、常圧でガス体であり、輸送や貯蔵においては、産業ガス技術との親和性も高い。
産業ガス業界では、水素やアンモニアを
産業ガスの1種として取り扱ってきた経験も有している。
水素は還元剤として金属熱処理やガラス焼成、キャリアガスとして電子部品製造の現場で使われてきた。
アンモニアは火力発電所の脱硝用や化学品原料として使われてきた。
エネルギー用途も、産業ガス業界の新たなガス体製品の販売メニューとなる期待も大きい。