【地域市場再発見・北陸】JDI、日本ガイシの大型投資に湧く北陸産業ガス市場

エレクトロニクス復調の兆し／コマツ減産で機会関連不透明

　北陸新幹線開通により、金沢―東京間は最速2時間38分で繋がり、富山・石川は「最早関東圏」と言われるほどである。中には、日帰り圏となった北陸にある営業所を閉鎖した企業もあるというから、東京との距離感は感じられなくなった。北陸地方への観光客が例年に比べ4割増えたという統計も出てきているから、経済効果には一役かったのであろう。しかし、これが産業ガス業界に恩恵をもたらしたかという質問に、地元ガスディーラーは「ほとんどない」と口を揃える。ただ、2023年には、北陸新幹線は福井敦賀まで延伸される予定で、「トンネル中和用の炭酸需要は期待できるのでは」と鼻息も荒い。
　北陸地方の産業ガス市場は、昨年の本誌北陸特集（No.797）もまとめたように、緩やかな回復傾向が続いている。鉄骨関連や電子部品、エレクトロニクス分野と様々な分野で仕事量増加に伴うガス需要が出ているようだ。設備案件についても、補助金や優遇制度を背景にユーザーの設備投資も昨年にも増して続いており、地元ディーラーの売上増に貢献している。

【市場分析】首都圏解体工事需要急増！
溶断ガス特需の可能性大

アセチレン容器不足に懸念

　首都圏は2020年の東京オリンピックに向け再開発ブームが起きているが、それより一足先に旧施設やビルなどの解体工事需要が急増している。しかしながら、国立競技場の解体工事が予定より4カ月遅れるなど計画遅延傾向にある。20年7月に始まる東京オリンピックに間に合わせるにはまず解体工事の迅速化を図らなければならないし、解体工期が延びるのは人件費など固定費上昇に繋がる。
　そこで注目されるのがアセチレンなど溶断ガス利用である。大型カッターなど大型工作機械で鉄筋コンクリートではある程度の解体は可能だが、鉄骨などをスピードをもって切断するのはガス溶断が優れており、特にアセチレン＋酸素の溶断が有望である。
　現時点では需要面では顕在化していないものの、すでに供給タイト化も囁かれてきた。アセチレン容器が不足する懸念が出ているのである。

【国内市場】江藤酸素、移動式水素ステーション事業始動へ

グループの江藤産業と合弁で来年竣工

　大分県の大手ガスディーラー、江藤酸素（中山信一社長、本社：大分市乙津町）は、本誌No.815で既報の通り、2014年度補正予算（約95億円）によるFCV向け水素ステーションの国家建設補助事業に名乗りを上げた。今年度中にも移動式水素ステーションを、大分市のグループ敷地内の江藤産業所有のオートガススタンドに隣接して設置する予定である。
　13年度から始まった水素ステーション公募事業の交付先は、首都圏、関西圏、愛知、福岡の4大都市圏を中心に現在74ヶ所で、事業者は岩谷産業やJX日鉱日石エネルギー、東京ガスや大阪ガスなどの大手エネルギー企業が名を連ねる中、地域ガスディーラーとしては、同社は徳島県の四国大陽日酸（武田和倫社長）とともに、初の水素ステーションの事業者となる。

【海外決算】海外メジャー、為替で明暗分けた欧州勢と米国勢

　ドル高・ユーロ安の影響で、海外メジャー4社の今年1〜3月の四半期決算の明暗が分かれた。ドル建てで決算を行うプラックスエアとエアプロダクツらの米国系2社が減収、一方ユーロ建てで決算を行うリンデとエア・リキードらの欧州系2社が増収となった。エア・リキード、リンデ、プラックスエアの3社の通期決算月は12月なので2015年度第1四半期に、エアプロダクツは9月が通期決算月のため第2四半期に影響がでた事になる。