【国内市場】エア・ウォーター×福岡酸素、
西九州地域液安定供給体制強化で協力

長崎、佐賀、福岡への物流合理化図る

　エア・ウォーター（豊田昌洋会長）と福岡酸素（藤内治敏社長）は長崎、佐賀、福岡など西九州地域の液酸窒素安定供給強化で協力することを決めた。
　具体的には、長崎県諫早市に両社共同出資の長崎液酸を設立し、小型高効率液製造装置VSUを建設、運営を開始する。営業運転は来年7月の予定である。また、両社及び三井化学、大陽日酸が出資する九州工業ガスのプラント老朽化による安定供給が懸念されていたため、出資各社による協議の結果、地域の液市場動向を見据えた生産能力の見直しを行い、ガス・液併産タイプのVSUAへリニューアルする。2016年2月着工、2017年1月営業運転開始の予定である。
　九州工業ガスと長崎液酸が液生産で連携することでバックアップ体制が整備され、西九州の液酸窒素の安定供給並びに物流コスト削減などの効果を生むことになる。引いては九州全体の液酸窒素安定供給にも寄与することが期待される。

【ニューアプリケーション】不整脈の治療で亜酸化窒素に新しい需要誕生

発作性心房細動治療に新たな治療の選択肢

　かつて本誌で「笑いが止まらない…」と記したこともあるほど、医療分野で成長株だった医療ガス、麻酔用「笑気ガス」は、今や下り坂。製薬会社が熱心に営業して、取扱いやすく、地球温暖化に影響しない静脈麻酔などに取って替わられ、1994年の1420t／年をピークに、出荷は下落の一途、現在は1／5ほどの280tの出荷となっている。
　この「笑気ガス」＝亜酸化窒素に新たな需要が生じている。日本メドトロニックが、限定施設での販売を経て15年10月5日から全国発売している「Arctic Front Advance冷凍アブレーションカテーテル」に亜酸化窒素ガスを冷却剤として利用するのだ。

【焦点】「顧客満足度の向上」をポリシーに新商材提案と配送合理化を行っていく
日本エア・リキード　田中成和　専務執行役員工業事業本部長

　約3年間、東芝と日本エア・リキードの合弁会社、東芝ナノアナリシス代表取締役社長を務めていた田中氏は、本年9月日本エア・リキード工業事業本部長に就任、再び一般工業ガス分野の指揮を執ることになった。停滞感漂う国内市場環境にいかなる方針を打ち出すのか。新本部長就任の抱負を聞いた。
　国内ガスメーカーが海外や生活、エネルギー関連へ事業の方向性を広げる中、国内の工業・医療ガス市場に注力する日本エア・リキードは、それだけに国内ガス市場のコンディションがストレートに反映される。15年度は全社的にはエレクトロニクスの復調もあって前年比プラスで推移しているが、田中氏の率いる液・バルク、シリンダーをが主体の工業事業分野は一進一退だ。ここ数年、頭を悩ませた電力コスト増は、今期、燃調費の兼ね合いで一服感が出てきた。「ただ、これまでの分の積み残しがある。ユーザにご理解を頂いた上での価格転嫁を進めていきたい」とする。

【海外市場】エア・リキード、米国エアガス買収で合意

買収額1兆6000億円、米国およびグローバルのリーディングカンパニーに

　世界の工業ガス市場のリーディングカンパニーである仏エア・リキードは、11月17日、米国最大のシリンダーガスメーカーであるエアガスを買収することで合意した。買収額は134億ドル（約1兆6000億円）で、実現すれば世界市場の約2割のシェアを占めるエア・リキードが、約4％のエアガスを傘下に加えることで、米国はもとより拮抗するリンデを抑えて世界最大の工業ガスメーカーとなる。
　エア・リキードはエアガスの直今1ヶ月間の株価に50.6％のプレミアムを付けた1株当たり143ドルで買い取ることで合意している。買収に係る資金調達は、30～40億ユーロの増資による借り換え及び米ドル、ユーロの組み合わせによる長期債で賄う予定。今後、エアガスの株主の承認と独禁法の査定を待って買収が正式に決定することになる。