【特集】次代につながる工業ガスニューアプリケーション

少量ながら多様な用途

　緩やかな回復局面にある国内工業ガス市場だが、2015年は酸素でピークの7割程度（JIMGA統計より）と、かつての水準には戻りえない状況にある。その一方で、農業・食品をはじめ消費生活に関連したガス需要の話題が、ここしばらく本誌誌面を賑わしている。
　こうした需要の特長は、1件あたりのガス消費量が決して大きくないこと。多くてもCEクラスで、大半はシリンダー、LGC、もしくはPSAや膜分離といった発生装置が担う。ユーザーの分布も、地域の農協や漁協、店舗単位であり、プロセスの条件や構成機器の組み合わせも、対象となる品種によっても変化する。まさに地域に密着し、きめ細かい情報収集力と営業力が必要な領域なのである。

【特集序説】浮かび出た!〝不滅〟と〝循環〟のガス事業特性

　ITとインフラの進歩に加え、経済のグローバル化により世界の工場は常に〝適地〟を求めてシフトしてきたが、何を作るのかというテーマは希薄になったような気がする。産業革命から200年以上が経過し、人間の生活を豊かに、便利にするありとあらゆるものが世に出現したといえるのではないか。無人の自動車やロボット、薬や宇宙の開発に見るべきものも出るに違いないが、いずれも進歩の世界である。人間の想像力がまだ及ばないような技術・ビジネス領域が残っているのであろうか。いわば製造業は漂流時代に突入している。
　それでもガスアプリケーションは不滅である。かつてのような鉄鋼、化学、エレクトロニクスに代わる裾野の広い大型需要はまだ見当たらないが、農業や漁業、あるいはサービス業のようなところでも細かい用途が拡大している。ガス事業の原点であるシリンダーガス需要である。