【新春予測】2020年の日本製造業と工業ガス需要見通し

みずほ銀行産業調査部データより

　市場成熟化が叫ばれて久しい日本の製造業だが、工業ガスの動向も需要先の大半が製造業となるだけにその動向に大きく影響を受ける。2016年の国内製造業と工業ガス需要の動向、さらに20年に向けた中期的な見通しはいかなるものになるのか。本誌では、16年の幕開けのタイミングに、みずほ銀行産業調査部が昨年末に公表した「日本の産業の動向〈中期見通し〉」を参照しつつ工業ガスの主要需要先である鉄鋼、非鉄金属、紙・パルプ、自動車、エレクトロニクスの20年生産見通しとガス需要の予測を試みた。
　その結果は、鉄鋼を基軸とする関連用途の停滞により酸素需要の縮小が避けられない反面、電子部品を基軸とするエレクトロニクスはグローバル市場に向け拡大、窒素需要は堅調な伸びをみせるというものである。酸素と窒素の生産バランスは、ますます開くことになり酸素から副生するアルゴンの製販バランスにも影響を及ぼしそうだ。

【市場動向】日本エレクトロニクスガス・機器市場、年1500億円の〝止揚〟

14～15年高水準の日本半導体製造装置市場

　1度は見捨てられたかのような見方をされた日本のエレクトロニクスガス・機器市場は粘り強い。今も規模は1500億円前後あって、ガス需要分野から見れば依然として最大規模である。
　エレクトロニクスガス・機器メーカーにとって日本はベースとなる市場であり、同時に東アジアを中心とするグローバル展開をいち早く進めている。おおよそ7～8割は海外向けが占める。さらに円安効果もあって特殊材料ガスおよび機器の国際競争力も高まっている。
　もちろん、この市場は一瞬たりとも油断できない。半導体1工場あたり数千億円規模の設備投資計画が突然延期されたり、急に減産に転じる、あるいはその逆も日常茶飯事だ。その変調サイクルはますますスピードを速めているのも事実である。そして3D半導体ではより高品質なガス・機器が要求される。まさに止揚のときといえる。

【エレクトロニクスガスインタビュー】不安心理が先行した昨年のNF3市場
セントラル硝子　三坂陽一　電子材料営業部長

半導体微細化・多層化でNF3、WF6需要旺盛

　セントラル硝子の特殊材料ガス事業が堅調に推移している。昨年に決めた宇部工場におけるWF6の設備増強（年産250t→同400t）では、増産ラインが2017年から本稼動に入る見込みだ。
　「15年は一言でいって良い年だった」と語る三坂陽一電子材料営業部長に今後の見通しを聞いた。

【医療】平成28年度診療報酬改定

慢性心不全に対する在宅人工呼吸療法について新設へ

　厚生労働省は1月13日、中央社会保険医療協議会（以下中医協）に対し、平成28年度診療報酬改定について、昨年12月に社会保障審議会医療保険部会・医療部会において取りまとめた「平成28年度診療報酬改定の基本方針」と財務大臣と厚生労働大臣の合意文書「診療報酬改定について」（診療報酬本体：プラス0.49%、薬価：マイナス1.22%、材料価格：マイナス0.11%とする改定率）に対する意見（答申）を求めた。中医協は2月中頃に答申するものと見られ、4月からの新たな診療報酬が明らかになる予定だ。

【落札】15年7月～12月官報掲載分、ガス関連案件計110件

　15年7月から12月の間に官報告示された落札案件中、ガス企業及びガス利用機器が絡む件数は計110件となった。
　産業ガスを中心とした売買契約が数多く結ばれる春先と異なり、夏以降は例年消耗品の案件に乏しい時期ではあるものの、各種医療機器、研究用機器は堅調である。特にMRIは、同期間中17件の案件がある等、手堅い需要に下支えされている。また同じ超電導利用機器であるNMRも、主に大学で関連機器含め計9件の調達案件があり、NMRメーカー、または理科機器商社が納入している。

【焦点】「高度化するニーズに応えるのが我々の使命」
ダイヘン　森本慶樹　取締役常務執行役員

造船・鉄骨向け国内溶接機需要好調

　ダイヘンは、15年度上期の業績を対前年同期比15.8％増の608億円で折り返し、下期にかけてもその勢いは止まらない。通期業績予想は売上高1320億円を見込み、経常利益も95億円と、過去最高だった昨年度を大きく上回る見通しだ。中でも溶接メカトロ事業は、国内製造業活況の波に乗り、販売台数を順調に伸ばし、第2Qを終え、売上高が同7.7％増の216億円と大幅な増収に貢献している。
　今年度から重点方針の1つとして営業力強化を掲げる同社は、今年4月に新販売組織「ダイヘン会」を立ち上げる。溶接メカトロ事業の販売組織「大溶会」と電設機器事業の販売組織「三水会」を1つに統合して異なる分野の商材を扱うことで商機を広げ、重点営業施策である『点から面へ』を推し進める狙いがある。