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No.837号

2016.04.01発行

ガスレビュー No.837号(2016年04月01日)

【ウルトラテクノロジー】キセノンの大型需要ルポ

最先端ニュートリノ研究にキセノン利用

 昨年10月30日、東北大学ニュートリノ科学研究センターはキセノン(Xe-136)140kg(2万5926ℓ)の入札を実施、原子力関連で実績を持つアトックスが8169円/ℓで落札した。キセノンは大気中にわずか0.087ppmしか含まれない希少成分であるが、Xe-136はその同位体の中でも天然存在比約8%であり、今回のような大型需要は文字どおり〝レア〟である。ちなみに2011年度には同じくアトックスが、検出器に封入されるXe-136と液体シンチレータを混合、分離する装置を同センターの実験施設内に納入した。
 研究機関では他にダークマター観測実験を行う東京大学宇宙線研究所が11月に純キセノン20kg(3623ℓ)の入札を実施、エア・リキード工業ガスが1372円/ℓで落札しており、電球光源、半導体に続くキセノンの有力な需要家となっている。
 こうした宇宙物理学研究の最前線はいかなるものなのか。岐阜県飛騨市神岡町にある東北大学ニュートリノ科学研究センターの実験施設を訪ねた。

【地域市場再発見・東北】非日常から緩やかに脱却するガス・溶材市場

広大な大地に豊富な分野の産業が点在

 2016年3月11日14時46分、大船渡港にサイレンが鳴り響いた。5年前、三陸海岸に津波の第一波が押し寄せた日時である。道路の整備は進行中だが、そこから見えるのは多くの空き地群。大きな堤防は陸前高田の〝奇跡の一本松〟を見下ろしている。三陸海岸地域は、風景が変わりつつある。新設された住宅もある一方で、依然として仮設住宅も残っている。道路は石巻から気仙沼、陸前高田、大船渡、釜石、宮古の南北、そして盛岡と宮古の東西の幹線道路建設が進められている。当初の瓦礫処理は福島第一原発周辺を残してほぼ終了したため酸素、プロパン需要もなくなった。今はむしろ、トンネル排水中和用炭酸ガスのスポット需要が活発だが、それもピークは越え、あと5年程度と見られる。
 東北地域を1つのガス・溶材市場で捉えるのは無理がある。岩手1県で四国全県とほぼ同じという広大さも要因である。本来は今の県単位ではなく、近世まで使っていた国や江戸時代の藩の方が相応しいかもしれない。仙台、盛岡、会津、荘内、久保田などの藩の個性は今でも気候や人の気質などの差異として生きている。結果、ガス・溶材にもその地域ならではの個性があるはずだ。

【国内市場】大陽日酸、JFEスチール倉敷向けオンサイトガス供給実施

2017年10月より、サンソセンター方式

 大陽日酸は、JFEスチール向けに17年10月より新たにオンサイトガス供給を実施する。具体的には、現在、JFEスチールが自ら行っている西日本製鉄所倉敷地区でのエアセパレートガス製造事業を大陽日酸60%、JFEスチール40%出資の製鉄所向けガス製造・供給会社、JFEサンソセンターに移管する。JFEスチール向けでは京浜(川崎市)、福山(福山市)に次ぐ、3カ所目のサンソサンター方式(JV)でのオンサイトガス供給で、旧川崎製鉄の製鉄所では、初の工業ガス企業によるオンサイトガス供給となる。
 大陽日酸では、本誌No.832(16年1月15日号)既報のように16年1月1日付で新日鐵住金とも折半出資でオンサイトガス供給を行う八幡サンソセンターを設立、八幡製鐵所向けオンサイトガス供給を実施する。製鉄所自らが装置を所有する自家消費型の製鉄所を相次いでJV方式のオンサイト供給へ切り替えていることになる。

【MIP・VIP】「マチソン・トライガスでMake it happenを共有」
市原裕史郎 大陽日酸 社長

オンサイト事業、米国に初上陸

 やや旧聞に属するが、大陽日酸の市原裕史郎社長は2月の半ば過ぎ、米国のグループ企業、マチソン・トライガスの次期予算会議に出席し、全米から集まった90名の幹部社員から「来年度も増収増益の事業計画」を聞き、意を強くして帰国した。その途端インフルエンザにかかる思わぬ〝副作用〟もあったが、米国子会社の元気さや活力がそれも吹き飛ばしてくれたらしい。 
 「米国の幹部社員が90人も集まるとなかなか壮観で元気の度合いが違う。私も『グループの中でもマチソン・トライガスはよく成長しており、重要度が増している。意欲的に新規プロジェクトにチャレンジし心強いものがある。投資資金については任せてもらいたい。Make it happen精神で頑張ろう』と挨拶した。Make itt happen(実現させよう)はマチソン・トライガスのチャレンジ精神を示す標語なんですね」

【焦点】中期経営計画最終年度、工業ガス事業基盤強化の目標を着実に達成する
山田容敬 東亞テクノガス 社長

「目標達成を次のステップに」

 東亞テクノガスは山田容敬新社長を1月1日付で選任した。東亞合成名古屋支店長との兼任である。
 山田社長は1963年11月生まれの52歳。1986年慶應義塾大学法学部卒、同年東亞合成に入社、2000年以降は三菱化学との塩ビ合弁会社立ち上げ、業務改善プロジェクト、秘書、購買、本店でアクリルモノマー営業、大阪支店長を経てきた。幅広い分野を歩いたことになる。
 そして1934年、矢作工業の創業時から生まれ、連綿と続く東海地域の工業ガス基幹事業の経営を委ねられたわけだ。

ガスレビュー目次

時事コラム

7

・島津製作所、アルゴン使用量、必要純度抑えたICP‐MS発売
・ヤマト・H2エナジージャパン、水素発生機能付きのポータブル燃料電池を開発
・アマダ、Photonix2016に出展
・大陽日酸、中村修二教授所属の米研究センターにMOCVD装置1機納入
・高野山大学フジキン小川修平記念講演開催

技術レビュー

21

・ダイヘン、「ロボット溶接品質管理システム」で柔軟な生産システムに対応

水素エネルギー

23

・ホンダ、FCV市販化第一弾「CLARITY FUEL CELL」発売
・FC EXPO2016開催
・京浜臨海部の低炭素水素活用実証プロジェクト今秋始動
・あいおいニッセイ同和損害保険、初の水素ステーション運営事業者向けの保険発売

流通回路

27

・小池酸素工業、東京こいけ市開催
・JFEコンテイナー、水素ステーション向け蓄圧器タイプⅡを開発中
・岩谷産業、冷凍加工の京野菜製造販売
・兵庫県高圧ガス協同組合、平成27年度一般高圧ガス販売主任者研修会開催
・フジキン、第34回フジ共創会新年互礼会開催

DATA

29

・2015年粗鋼生産量と酸素消費量

最新工業ガス関連株式市況

29

ガスレビュー指標

30

・ガス関連機器編

HOT ASIA PRESS

31

・伊藤忠エネクス、日系企業向け工業ガス充填販売『インドネシアプロジェクト』始動

海外決算

31

・エア・リキード、大規模契約・エレクトロニクス牽引で増収増益

第3四半期決算

31

・関東電化工業

組織人事

32

・トリケミカル研究所
・福岡酸素

短信

32

・サーモス、アイスコーヒーメーカー発売

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