【経営トップインタビュー】工業ガスメーカーの視点

海外展開に活路見出す

　地域市場へのフォーカスに加え次代につながる+αを海外展開に見出す動きもある。グローバル市場に成長の糧を求めるというものだ。国内製造業の海外進出に併せて、ガス事業をグローバルに展開していくビジネスモデルは、30年以上前から行われてきた。ただ、かつてのオンサイトガスモデルは、未踏の国に橋頭保を築く効果はあるものの、現地でのガスビジネスの拡大にはつながらないケースも多かった。地産地消のエアセパレートガス事業で持続可能な事業モデルの構築が求められている。
　2016年は、工業ガスメーカー各社が、次期中計を公表、策定していくタイミングでもある。次ページからは大陽日酸、エア・ウォーター、岩谷産業の経営トップに工業ガス市場の見通しと取り組みについて聞いてみた。

【メッセージ】工業ガス業界人「私の35歳の時」

　本誌が1981年の発刊から35歳を迎えたのにちなんで、工業ガス業界人の方々が35歳頃、いかなる業務やキャリアを積んでいたのか。当時を振り返るコメント集。35歳頃に携わっていた業務や仕事の内容、苦労したことや教訓となったこと、現在の30代半ばの後輩諸氏へのメッセージを語ってもらった。

【特集序】産業ガス事業を持続的成長につなげる+α

永遠の商品力、産業ガスの未来的役割の追求

　永遠に必要とされるガスの特性は、その代わり常に時代の主役になることもない逆性と考えられて仕方がない。基幹となる産業や社会の変遷と常に同伴しながらも、どこかでその変化を客体化し、透視しているガスの存在がある。従って、ガス業界の役割や使命はこれからの新しい時代にあっても軽減されることはない。目に見える成長性に確信を持てない時に、どのような新しい価値を創出するか、未来への責任ともいえる。

【35周年記念特集】地域と海外、2つの市場に注がれる視線

ニューアプリケーションの土壌に

　国内工業ガス市場は、量的拡大の恩恵を全てのプレイヤーが享受できる時代ではなくなった。新規オンサイトユーザーの出現が見込みにくい市場環境の中、相対的に地域市場の価値が高まってきている。
　実際、地域ガス市場は、エレクトロニクス産業の減退、LPガス輸入価格下落をはじめ、様々な逆風要因が吹き荒れる中でも安定している姿を見て取ることができる。本誌が例年行っている全国ディーラーランキングの数値を見ても、少なくとも10億円以上にランクインしてくる企業総数、事業総額は、マイナストレンドを歩んでいない。ガス単独ではなく、溶材・機械といった周辺機器、設備工事、LPガスや医療といった生活関連事業を複合的に取り組むことで、リスクヘッジが効き、経営の安定化につながっていることが伺える。

【市場動向】酸素リッチのスキューバダイビング用ガス「ナイトロックス」
6月より規制緩和で空気ボンベ同様販売可能に

国内約30台導入の製造装置に需要拡大見込み

　スキューバダイビングでの身体的負担を軽減するため酸素濃度を高めた混合ガスのナイトロックスが、経産省で3月に開催された第10回高圧ガス小委員会での決定で、高圧ガス保安法上、産業用酸素の扱いではなくなった。6月から販売主任者以外も販売が可能となったため、全国約1000店舗に及ぶダイビングショップへの拡大が見込まれる。
　ナイトロックスは窒素を表す英語の“Nitrogen”と、酸素を表す英語の“Oxygen”を組み合わせた造語で、現在レジャーで使用されるナイトロックスの約90％が専用の製造装置で生産されている。製造装置の国内累計販売台数は約30台と見られる。
　ダイビング業界では、年1回以上潜るダイバーの人口を約100万人としており、そのうち約20％がナイトロックス利用者だという。近年では密漁の監視を目的に、漁協と連携してダイビングサービスを提供する動きが出始めており、今後のナイトロックスおよび装置の需要拡大の後押しとなりそうだ。　

【トピックス】エドワーズ、プラズマ式排ガス除害装置の市場投入を計画

　エドワーズは排ガス除害装置の新製品として「プラズマ式除害装置 プロテウス（Proteus）」の市場投入を計画している。
　現在、主要顧客である大手半導体メーカーがプロテウスを評価中。同社VEMDアプリケーション本部の高橋克典本部長は「排ガス除害装置のトレンドは燃料不要でCO₂フリーとなる『プラズマ式』のマーケットシェアが増加傾向にある。市場ニーズに合わせて早急にプラズマ式の販売展開を図りたい」と語った。
　同社は燃焼式排ガス除害装置の世界トップメーカー。日本市場に本格進出したのは1997年頃で、独自技術である内部放射燃焼式を採用した製品「TPU」の拡販に成功している。