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No.844号

2016.07.15発行

ガスレビュー No.844号(2016年07月15日)

【追跡ルポ・熊本地震】震災後復活の8月、大型ユーザー始動に備え充分のガス企業

半導体工場続々と再開

 4月の2度に亘る震度7の大地震に見舞われた九州熊本地区、今なお被災者は大変な苦労を強いられているが、2ヶ月半過ぎたガス関連企業を訪問してみると、少なくともガス関連設備に関しては完全に通常状態に戻っている。
 震災直後は、停電によるプラント停止やボンベの転倒、LGCの倒壊など被害も出たが全般的に見れば軽微なもので、3週間後にはほぼ復旧していた。むしろ、目下の最大の課題は、ソニー熊本やルネサス、東京エレクトロンなどの半導体工場やアイシンなど自動車部品関連といった主要ユーザーや、一部交通網が完全復旧しておらず、日常業務やビジネスが滞っている点だ。

【海外市場】大陽日酸、エア・リキードとエアガス買収に伴う北米事業譲渡分の取得で合意

買収額は過去最高に

 大陽日酸は6月24日、米国市場において、エア・リキードによるエアガス買収に伴う米国事業の分割譲渡分について、エア・リキードと合意、買収契約を締結したと発表した。正式な譲渡は、米国公正取引委員会(FTC)の承認を得てからとなるが、大陽日酸は、今回新たに米国において18基の深冷空気分離装置によるエアセパガスをはじめ、炭酸ガス・ドライアイス、亜酸化窒素製造など、年間約2億63百万ドル(約270億円)の事業を手に入れることになる。16年3月期末業績の同社北米売上高は、約1885億円。この数値は、決算期調整のため15ヶ月分の業績であり、3ヶ月の余剰分約387億円を差し引いた1500億円に今回の270億円が加わる計算となる。
 買収額は明らかにしていないが、これまで同社最大の買収案件だった09年のバレーインターナショナルの買収額、5億72百万ドルを上回る過去最高としており、日本円で600億円近くに達するとみられる。

【市場分析】特殊材料ガス容器再検査フル操業

大型容器対応が主力に

 特殊材料ガス容器の再検査が多忙を極めている。東のカンサン、西のエムシイシイの2社はフル操業状態が続いている。要因としては2010年以降急増した大型容器の再検査が集中しているためである。
 三弗化窒素やアンモニア、モノシラン、亜酸化窒素、塩素など一部の特殊材料ガスは、半導体や液晶のプロセスで大量に使用されるようになってきた。そこでシームレス中容器(内容積47ℓ)から大型容器での供給ニーズが2010年前後から国内外で強まってきている。
 ちなみに大型容器にはデカボンベ(内容積470ℓ)、トンコンテナ(同930ℓ)、チューブトレーラーもしくはISOコンテナ(長さ20ft、40ft)などの種類がある。
 従来の47ℓや10ℓ容器も増えており、容器の多様化は再検査の手間がこれまで以上にかかることになる。また、輸出用大型容器が増加する中で米国運輸局省のDOT再検査工場認証などグローバル対応も求められている。

【ディーラーランキング】2015年総額1兆1367億円、前年ほぼ横ばい

過去最高水準をキープ

 本誌No.840(16年5月15日号で15年に決算期を迎えた全国工業ガスディーラーのうち売上高50億円以上のランキングを掲載したが、今号では同10億円以上の売上高総計をまとめた。15年は、総額1兆1367億45百万円で前年ほぼ横ばいの結果となった。ランクインした企業数は177社で、こちらは前年に対して1社増加した。
 先の50億円超のランキングでは前年比0.7%のマイナスであったが、40億円以下の業績総計で、前年マイナス幅を盛り返したことになる。
 今回のランキング対象時期である2015年の工業ガスディーラーを巡る市場環境は、LPガス主体、LPガス兼業のディーラーの多くが業績を落とした反面、機械設備関連の導入補助金が増加、ガス関連機器・設備の新規導入が相次いだ期間でもある。停滞感拭えないシリンダー、溶材などの消耗品を尻目に、機械設備・工事案件が、ディーラー業績の下支えとなった。医療関連でも、病院設備工事案件は好調で、院内ガス消費量が伸び悩む中、ガス低/機器・工事高の市場構造が顕著な時期であった。

ガスレビュー目次

MIP・VIP

7

・「信州で半農半電の地域創生モデル」
豊田昌洋 エア・ウォーター会長

海外決算

8

・エアガス、2016年3月期通期決算

組織人事

9

・岩谷産業
・エア・ウォーター
・久世ベローズ工業所、久世太郎専務が社長就任
・JIMGA、新任役員決定

焦点

10

・「日本はイノベーションを生み出す拠点、変革しながら今後も深くコミットしていく」
矢原史朗 日本エア・リキード代表取締役社長

短信

12

・CRC西日本、YKHKから感謝状を受領

国内市場

13

・カンケンテクノ、排ガス処理装置販売が好調で売上高は15%増に
・ダイキン工業、エッチングガス販売15年度15%の伸び

時事コラム

15

・大日本アガ、大型タイヤ搭載、LGC容器運搬車発売
・アマダ、「AMADA INNOVATION FAIR 2016」開催
・サイサン、電力供給事業「エネワンでんき」初年度契約目標件数3万件を突破
・日本化学機械製造、はばたく中小企業300社に選ばれる
・サーモス、「サーモス・ヒートガーデン」六本木ヒルズに4日間限定オープン
・大阪ガスリキッド、ヘリウム精製装置の販売を強化
・MiZ、水素ガス吸入機、高濃度タイプを発売

海外トピックス

18

・タンザニアで高含有ヘリウムガス田発見

流通回路

19

・マツモト産業、2016OWF説明会・決起大会開催
・大岡酸素商会、溶接工を対象とした溶接セミナー実施
・エア・ウォーター、北海道の加工食品工場を子会社化
・鈴木商館、ガス関連工事牽引で3期連続増収
・近畿高圧ガス容器管理委員会、平成28年度定時総会開催
・兵庫県高圧ガス協同組合、第56回通常総会を開催
・低温工学・超電導学会、設立50周年記念式典・特別記念講演開催
・日本メガケア、社長交代
・岩谷直治記念財団、芳賀新事務局長就任

安全・保安

21

・「産業医学から見た工業ガスのリスクアセスメント」
圓藤吟史 日本産業衛生学会理事長大阪市立大学名誉教授医学博士

DATA

23

・15年度シームレス中容器検査本数

最新工業ガス関連株式市況

23

ガスレビュー指標

24

・ガス編

技術レビュー

25

・下水処理場で発生する二酸化炭素や水素を再生可能エネルギーとして利用
・大陽日酸、TIG溶接機を使ったプラズマ溶接システムを開発

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