【地域市場再発見・九州その①】半導体・造船・自動車復調で晴れ模様の北西部九州工業ガス市場

補助金効果で機械好調/農水産業、民生分野の新ビジネスも充実

8月下旬、快晴であるが、その分猛暑の中訪れた九州北西部では、半導体、自動車、造船といった主力産業が好調を維持し、15年は地元産業ガス市場もおおむね好天に恵まれた模様だ。
地元ガス企業の多くから、「15年度は前期比横ばい～増収」とのコメントが得られた。
補助金効果で機械需要も底堅く、機器メーカーやディーラーも潤った模様である。
まずガス市場の状況について各ガスメーカーに尋ねたところでは、大陽日酸は、15年度エアセパレートガス販売量が約5％増となった。
岡村匡九州支社ガス営業部長は「一般工業向け窒素が牽引し、4割を占めるエレクトロニクス関連は堅調に推移した。
新たな需要元としては、養鰻向け酸素も伸びてきている」と分析する。

【市場動向】ファイバーに押され気味の炭酸ガスレーザ発振器、食品・半導体に新用途開拓進む

食品フィルム・EUVに光明

切断加工ではファイバーレーザに押され気味の炭酸ガスレーザ発振器だが、食品フィルム包装の微細加工機向けや次世代リソグラフィの”EUV”光源向けに新規開拓が進んでいる。
レーザ加工機市場では、特に切断機で顕著であるが、高レーザ品質かつ低コストに加工が行えるとして、ファイバーレーザが販売の勢いを強めており、炭酸ガスレーザは縮小傾向だった。
しかしレーザの波長がファイバーレーザの1.08μmに対して炭酸ガスレーザでは10.6μmという特性上、炭酸ガスレーザでなければレーザ光が透過してしまい加工できない材料も未だ存在する。今後はそれら特殊加工向けに改良・販売を加速させることで、ファイバーレーザとの用途の棲み分けが進むと見られる。

【MIP・VIP】「36年目の開花、米国のバルク生産能力4強に拮抗」市原裕史郎 大陽日酸社長

本誌847号で既報した独リンデと米プラックスエアの接近は、結局のところご破算になったようだが、米国市場に重心を置く市原裕史郎社長にとって無関心でいられなかった。
「相当突っこんで交渉が行われたことは事実でしょう。もし（合弁が）成れば当然、FTCが事業分離を条件とするでしょうし、その辺は注目してましたが、どういう経緯かはまだ解らないですね」と語る。
海外ガスメジャーが描く、大型M＆Aのスケール、あるいは飽くなき国際ガス業界における覇権争いの激しさに今更ながら驚かされるが、大陽日酸もまたその巨大な渦に参画している。エア・リキードによるエアガス買収に伴って、米国FTCが裁定した分離事業の主要な部分を大陽日酸が買収することに正式認可が下りた。買収価格は7億81百万＄、1＄＝100円としても781億円、この交渉が始まった頃は800億円は超えていたかも知れない。

【ニューアプリケーション】三菱重工業が開発、窒素ガスパージロボット出現

トンネル火災などの内部調査に威力

三菱重工業（本社：東京都港区、宮永俊一社長）は7月、千葉工業大学と共同し、トンネル災害時の現場調査向けに、耐圧防爆構造と窒素ガスパージによる内圧防爆構造を組み合わせることで、現場に引火性ガスが充満していても爆発の危険を伴わず、遠隔操作で内部の状況を確認できるロボット「桜Ⅱ号（防爆仕様）」を開発した。
現在災害現場では、バキュームによる換気装置を備えた特殊車両を稼動させ、内部の引火性ガスが無くなったことを確認した上で調査が行われている。このため車両の操作や装置の設置・移動などには多くの人員を割く必要があり、現場に立ち入るまでに数日かかるといった問題があった。
同ロボットを導入すれば、操作が簡易であることから少ない人員で調査が行えるほか、防爆性能により爆発などの二次災害を引き起こさず、早急な状況確認が可能となる。同社は、今般の移動ロボットでの国内初の防爆認証取得を梃に、警察や消防などレスキュー関係への販売を目指すとしている。

【海外市場】リンデ―プラックスエア、合弁交渉断念

リンデ―プラックスエアの合弁交渉は、9月12日、打ち切りになった。同日付で両社がHPで公表した。工業ガス世界No.1企業の誕生は道半ばで潰えたことになる。交渉打ち切りの理由として、リンデはガバナンスの問題としている。