【地域市場再発見・近畿特集】花開き、ガス肥ゆる近畿ガス市場

鉄鋼、建機からマンションまで…ユーザーの仕事増で俄かに活気付くガスメーカー・ディーラー

　リーマンショック以後の近畿ガス市場は、言い様の無い停滞ムードに覆われていた。増税後の市場活性策でもある「ものづくり補助金」に代表される各種補助金を利用した装置・機械ものは出るものの、仕事量の低下から消耗品であるガス・溶材需要が上向いて来なかった為である。
　しかし今回、改めてその状況を各社にきくと、その伸び方は各社各様であるものの、取材に応じて頂いた方々は皆一様に晴れ晴れとした表情を見せていた。域内メーカーの声を集めても、「ガスは下げ止まり、むしろやや復調してきている。特に建材関連での仕事については、補助金頼りではなく、仕事量が増えてきている印象がある」（大陽日酸）、「電炉向け酸素や化学品メーカー向け窒素、アルゴンなど、対前年でもガス種を問わず販売が好調である」（岩谷産業）、「世界的な景気回復が、直接もしくは間接的に近畿に波及し、様々な業界のユーザー稼動率が向上している」（近畿エア・ウォーター）などといった状況で、これまで燻り続けてきた近畿が、いよいよ熱を伴って活性化してきた様である。

【市場動向】オーバーヒート懸念も、半導体製造装置向けガス関連機器メーカーフル操業続く

導体製造装置市場分野向けガス関連機器需要は昨年9月以降、高水準状態を保っている。ユーザーからの注文は続くが「納期については選別が避けられず全体的には長期化している」（機器メーカー）のが現状だ。一方、生産体制増強に対応する中で各種精密加工装置導入負担増や増員に伴う人件費増などや電子部品など各種部品調達が難しくなるなど不安定要因も広がっている。
　日本半導体製造装置協会（SEAJ）が9月12日発表した世界半導体製造装置の2017年第2四半期（4～6月）の販売高は前年同期比35％増、141億1千万㌦となったと発表した。これで3期連続して過去最高額を更新した。牽引役は3D‐NAND型フラッシュメモリ用製造装置需要である。

【企業研究】エア・ウォーター、次代を見据えた鍵「経営改革2017」の要諦
8つの事業、8つのカンパニーが織り成すシナジーに期待

組織力で次代の成長を勝ち取る

　今春、エア・ウォーターは次代を見据えた大胆な役員人事と組織改正を行った。「経営改革2017」と銘打ったこの改革では、3名の専務の中で最も若い白井清司氏（58歳）を代表取締役社長兼COOに昇格させ、最高業務執行責任者の若返りを図り、北海道、関東、甲信越、近畿の4つの地域を統括する地域代表と産業ガス、医療、農業・食品、ケミカル、エネルギー、物流の各カンパニー代表者らを全員常務以上の役付き役員とした。
　組織面では、最高事業執行責任者たる代取社長直轄の社長室を新設、産業、ケミカル、医療、エネルギー、農業・食品、物流の6つのカンパニーに海水、エアゾルの2つの独立事業を加えた8つの事業分野と北海道、東北、関東、甲信越、中部、近畿、中・四国、九州の8つの地域事業会社で、国内市場を中心にさらなる事業深耕と新たな事業創出を試みる。
　2017年エア・ウォーター経営改革の狙いと目標、次代に向けての課題について、豊田昌洋会長、白井清司社長両名のインタビューを元に解明していきたい。

【地域市場再発見・北海道】札幌中心に大型開発案件目白押し

人手不足背景にロボット好調

　2017年夏から秋にかけての北海道工業ガス関連市場は、自動化投資がけん引、ロボット、溶接関連機器を中心に昨年来の好調をキープしている。「札幌創世1.1.1区」と呼ばれる札幌駅東側の再開発事業をはじめ、東京オリンピック関連の仕事もようやく出てきた。道内の鉄骨関連需要は堅調だが、かつてと様子が異なるのは、人手不足の環境にあることだ。北海道エア・ウォーター曽我部康社長は「人手が無くても24時間、365日フル稼働できる鉄骨ロボットが、今回の主役。当社も順調に受注している」とコメント、機械設備関連の底堅さを強調する。
ガス関連では、圧接向け酸素―アセチレンは、未だ低迷の時から抜け出せないでいるが、新幹線トンネル工事向けでの炭酸ガスや石狩LNG火力発電所向けでのアルゴンは、堅調な出荷を続けている。さらに札幌市周辺では、駅前開発に続き、新幹線新駅の建設計画、札幌オリンピックの誘致と今後も大型プロジェクトメニューが用意されている。札幌を東京、大阪、名古屋に並ぶ日本の大都市として、拡大成長させる意向で、当分こうした追い風は、道内のガス関連機器市場に明るい話題を提供しそうだ。