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No.937号
2020.06.01発行
ガスレビュー No.937号(2020年06月01日)

コロナ騒動に翻弄される国内工業ガス市場
新型コロナウイルスが人々を分断し、経済を動かすインフラである工業ガスにも暗い影を落としている。
本誌が5月連休明けに実施した主要ガスメーカーに対する取材によると、2月〜4月の工業ガスの出荷量は総じて低調。前年同月比は酸素が4〜8%、窒素が2〜8%、液化炭酸ガスが7〜15%、水素が10〜15%、ヘリウムが2〜5%の減少。ほぼ前年並みを維持したアルゴンや特殊要因のある溶解アセチレンを除けば軒並みマイナスとなった。
とはいえ、リーマンショックを超えるとされるコロナショックの割に、各ガスの減少幅はそれほど大きくない。
外食、旅行、航空、アパレルといった不況業種、また工場の操業停止を余儀なくされた自動車、鉄鋼などと比べると、工業ガスへのコロナの影響は現時点においては比較的に軽微といえるのかも知れない。
ただし歴史を振り返ると、スペイン風邪が流行した約100年前は疫病の収束に2年がかかり、その後は経済が長期的に悪化。
収束から9年後の1929年に世界大恐慌が勃発している。
「歴史は繰り返す」かどうかは神のみぞ知るところだが、工業ガスの事業運営もコロナ前には戻れない情勢になりつつある。
アルゴンがレアガスになる日
先細る鉄鋼ソース、供給タイト化進む
現在、アルゴンは供給タイト化に陥っている。最大の要因は、日本の鉄鋼不況に、新型コロナウイルス(COVID‐19)が加わりダブルパンチとなった。
粗鋼生産稼働率が低下、酸素パイピング需要が減少、副生されるアルゴン生産量が低下しているのだ。
そうした直近の事象だけでなく、大手粗鋼メーカーである日本製鉄やJFEスチールは高炉を始めとする工場の統廃合を断行することを明らかにしており、中長期的に見て鉄鋼のアルゴン供給力は減少していくことが避けられないのである。
現状、アルゴン生産能力は約7割を鉄鋼系ソースに依存、他の化学や液プラントでは、それを補うことは全くできない。
アルゴンは酸素のおまけであり、酸素ガスプラント能力が10万㎥/h以上で大量に作ることが可能なのだ。
そうした大型酸素プラントが減少していくことは大きな打撃である。
冗談ではなく近く「アルゴンがレアガスになる日」が来るかもしれないのである。
新型コロナウイルス対策
新型コロナ禍、HOT、CPAPの遠隔診療で使われるモニタリングシステムへ要望も
関連ニュース/フィリップス・ジャパン、CPAP用遠隔モニタリングシステム、人工呼吸器、酸素濃縮器に機能拡大
新型コロナウイルス感染症拡大の中で、医療現場で使われる診療システムとして注目されているものの中に、2018年に公的保険(診療報酬)が適用された、パソコン、タブレット、スマートフォンなどの情報通信機器を使うオンライン診療がある。
本来、慢性疾病患者の対面診療の補完目的で活用されているものだが、新型コロナウイルス感染症患者が急増する中、来院患者による院内感染の発生を懸念し、また対面診療のみでは捌ききれないとの医療機関からの要望を受け、特例で規制緩和が行われ、臨時措置(感染が収束するまでの期間限定)として新型コロナウイルス感染患者対象のオンライン診療が保険適用となっている。
在宅酸素療法(HOT)や在宅持続陽圧呼吸療法(SAS)という在宅医療分野で使われている遠隔モニタリングシステムにも新型コロナ禍下における要望が寄せられているようだ。
目次
市場動向
3
・コロナ騒動に翻弄される国内工業ガス市場
市場分析
6
・アルゴンがレアガスになる日
・先細る鉄鋼ソース、供給タイト化進む
新社長インタビュー
8
・「デジタル技術で事業の革新目指す」
・岩谷産業 間島寛 代表取締役社長
新型コロナウイルス対策
9
・新型コロナ禍、HOT、CPAPの遠隔診療で使われるモニタリングシステムへ要望も
・関連ニュース/フィリップス・ジャパン、CPAP用遠隔モニタリングシステム、人工呼吸器、酸素濃縮器に機能拡大
・全国の工業ガスディーラーの新型コロナ感染症対策
流通回路
12
・エア・ウォーター、熱膨張性黒鉛事業で合弁会社、エコ素材使ったSDGsバッジ製作
焦点
13
・「コロナを契機に業務のデジタル化を推進」
・大陽日酸 永田研二 取締役専務執行役員
国内市場
14
・大陽日酸、液体窒素式細胞凍結フリーザ―の大型機種発売
・CKD、窒素ガス精製ユニットの流量ラインナップ拡充
・パナソニックスマートファクトリーソリューションズ、VR使ったロボットティーチングシステム開発
時事コラム
15
・コフロック、屋外仕様PSA累計出荷15台に
・ワイン・アクセサリーズ・クリエイション、ワイン酸化防止ガスを窒素からアルゴンに切り替え
・大陽日酸、米チャート製MVE凍結保存容器値下げ
・三井・ケマーズ、オハヨー乳業からR463Aの採用得る
水素エネルギー
17
・トキコシステムズソリューションズ、4月から水素事業推進本部立ち上げ
・日本エア・リキード、北名古屋市に水素ステーション開所
エレクトロニクスガス関連機器メーカートップインタビュー
18
・MFC安定供給を基盤にしてプロセスのソリューションを提供する
・堀場エステック 小石秀之 代表取締役社長
海外決算
19
・リンデ
・エア・リキード
・エアプロダクツ
海外市場
22
・エアプロダクツ、臨時病院に72時間で医療用液酸供給設備を設置
・エア・リキード、イタリアで医療用酸素インフラ強化
・リンデ、北欧事業の一部をGasumに売却
DATA
23
・2019年暦年圧縮水素出荷量
最新工業ガス関連株式市況
23
ガスレビュー指標
24
・機器編
保安
25
・19年の中国ASU爆発事故、IHCが検証会議実施
決算
26
・大陽日酸
・岩谷産業
・住友精化
・小池酸素工業
組織人事
28
・大陽日酸
・住友精化
・小池酸素工業
・新コスモス電機

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