ダイヤモンドパワー半導体デバイスの高出力化成功　5年後実用化に照準合わす

〝次世代パワー半導体〟と評されるダイヤモンドパワー半導体デバイスの実用化が近づいてきた。嘉数誠佐賀大学教授らによる研究グループは今年4月、共同研究を行うアダマンド並木精密宝石（東京都足立区、並木里也子社長）が開発した１インチのダイヤモンドウェハ上に新たな動作原理のデバイスを作製したところ、1㎠あたり179ＭＷの電力出力密度に到達したことを発表した。これまで同デバイスだと8ＭＷ／㎠の出力が最大とされており、4月の発表でおよそ20倍の値が確認できたとしている。5年後には出力3000ＭＷ／㎠の実用化を目指しており、高周波領域向けでの実装を目指している。
　ダイヤモンドパワー半導体はシリコン半導体と比べると、およそ５倍のバンドギャップを有すること、絶縁破壊電界強度や熱伝導度が他の半導体と比べて大きいことが特長に挙げられ、省エネ目的でのパワーデバイスや100ＧＨｚ、100Ｗレベル以上の高周波・高出力での対応に強いとされている。

液化炭酸ガス・ドライアイス、低位安定の需給バランス継続

供給力強化へ各社の投資進む

　年々供給タイトが深刻化する液化炭酸ガス・ドライアイス市場だが、今夏の需給は比較的安定推移した模様だ。ピーク期を前にした６月頃には主に関東圏で上流側の停電や火災、液炭生産設備の不具合といったトラブルが相次いだものの最需要期にはほぼ復旧、ある主要メーカー担当者は「ここ10年で最も平穏な夏といって良い」と表現するほどだった。
　ただし、その背景には需要市場動向の伸び悩みという側面もある。JIMGA統計によると、液炭工場出荷量は5月前年同月比8.4％増、6月同10・２％増とコロナ影響を脱したかに見えたが、７月同6.9％減、8月同7.2％減、９月同17・２％減と再び沈んだ。中でもシリンダー供給を担う充填所卸分は回復が鈍い。溶接用途の主要需要家である造船は景況が未だ上向かず、自動車も半導体不足による生産調整を繰り返す不安定な状況である。

サプライチェーン全体の排出量算定・報告でガスディーラーとも無縁ではないカーボンニュートラルへの対応

　本誌№970（21年10月15日号）記事では、工業ガス業界からの温室効果ガス（GHG）排出量の大半を占める空気分離装置、エアセパガス事業におけるカーボンニュートラルの影響と対策・課題について検証してきたが、今回はシリンダー配送をはじめとする川下領域への影響について検証していきたい。
　ガスを消費先にまで配送するという流通段階における直接的なCO₂排出は車両の運行時以外殆どないから、これまではCO₂排出に関する算出・報告、削減の要請はなかった（温対法の範疇）。
　ただ、これからは全く算出・報告を行わなくても良いというわけにはいかなくなりそうだ。流通段階においてもCO₂排出の算出・報告、そして削減に向けた取り組みの有無が問われる可能性が高まってきている。
　というのも、CO₂排出量の算出・報告は、製造段階や消費の時だけでなくサプライチェーン全体を対象にするという動きがあるからだ。